ピーター・シュワルツの「シナリオ・プランニングの技法」を読みました。
シナリオ・プランニングの本は、何度か取り上げていますが、絶版の本をついに手に取ることができました。
最初に、シナリオ・プランニングについて以下のように書いてあります。
「シナリオ・プランニングは、非常に不確実な現実世界において長期的視野を持つためのツールである。(中略)シナリオは、将来可能性のあるいくつかの異なった未来への道標を示し、それぞれの道筋において、とるべき適切な対応を見出すための方法論である。シナリオ・プランニングは、その結果がどうなるかについて理解したうえで、今この瞬間に決定を下すためのものである。」
カバーには、「シナリオ・プランニングの考え方」として、以下の4つが書かれています。
・未来を正確に予測することは不可能であるにもかかわらず、
戦略策定時に事業環境の見通しを一つしか持っていない
のは危険きわまりない。
・複数のシナリオを検討することで、自分が選択する戦略の
リスクを測り、注視すべき指標、とるべき対策を事前に
考えることができる。
・シナリオを作成することにより、企業変革に必要なマインド
セットの進化が促される。
・マインドセットが進化するとき、組織は学習する。シナリオが
組織内で共有されるとき、その組織の学習は促進される。
そしてこの「学習する組織」を築くことこそが、競争力の源泉で
ある変化に対応するスピードを生む。
戦略策定に必要な長期的視点、複数シナリオを取り入れることができ、とても興味深いツールだと思いますが、採用している企業の話を聞いたことがありません。(残念)
現場にいると、本社から発信される戦略が、短期的視点のみだったり、そんな風になるわけないでしょ(1つのシナリオ)、だったり、偉い人だけ考えたことは現場ニーズ、代理店ニーズに合わないことがよくあります。なかなかマルチステークホルダーで話すことに慣れてないので、どうしても視野が狭くなりがちです。
そういったことを「読者のためのガイド」として、最後にポイントをまとめてくれいます。
「戦略的対話というのは、企業中に散らばった重要な意思決定者が行う、考え抜かれた、それでいて形式にとらわれない徹底的な対話である。」
「なぜ、大半の組織ではこのような戦略的対話が行われてないのだろうか。理由は二つある。まず第一に、多くの組織は戦略的対話になじみがないからである。対話そのものはのべつ行われているが、非公式の対話が明示的に公式のプロセスに入り込んでくるということに経営者たちは慣れていない。第二に、経営者たちは変化が必要だとは考えていないからである。」
戦略的対話をどうやって作り上げるか
1 快適な環境を作る
2 キーパーソンと外部の人間を入れて最初のグループを結成する
3 企業の外部にある情報と外部者を入れよ
4 意志決定を下すはるか前から考えよ
5 現在と過去を見ることから始めよ
6 小グループで暫定的シナリオ作成を行う
7 対話を使って遊んでみる
8 恒常的な戦略的対話の中で生きる
シナリオ作成のステップ
ステップ1 焦点となる問題または決定を下すべき問題を
明確にする
ステップ2 部分的な事業環境におけるキーファクター
ステップ3 ドライビングフォース
ステップ4 キーファクターとドライビングフォースを重要性と
不確実性によって分類する
ステップ5 シナリオ・ロジックの選定
ステップ6 シナリオに肉づけする
ステップ7 シナリオの意味
ステップ8 先行指標と道標の選定
※ドライビングフォースというのはシナリオの筋書きを動かす要因
であり、物語の結末を決定するもの
最後の最後に付録として、アダム・カヘンが行ったアパルトヘイト後の南アフリカのシナリオ・プランニングの事例が引き込まれました。
この本が絶版とは悲しいですね。
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